Go to School News 2025.5.1 vol.1
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文芸評論を書く・読むことで、世間の常識や価値観が変わる。それが醍醐味で面白いところ皆と同じことをしていれば波風の立たない時代に 「自分だけの言葉」を使う大切さ部活と勉強に追われる高校時代ハードな生活を支えてくれたのは大好きな読書でした     3 しょうか?る仕事ですね。たくさんある本のなかからどのような本を選べばいいか、どのように読めばいいのか、迷っていたり、わからなかったりする人たちに、どんな本があって、どのような魅力があるのかを伝えるのが役目だと思っています。すか?書評を書いています。それ以外では雑誌やWeb連載の執筆、最近ではYouTubeやポッドキャストの配信、また講演などの仕事もしています。いていると本が読めなくなるのか』)や、母と娘の葛藤をテーマにした本(『娘が母を殺すには?』)など、さまざまなテーマで執筆されていますが、テーマはどのように決めるのですか?取り上げられてないな」というテーマを見つけたいと思っています。どこにそういうテーマがあるかな、と常に考えて、探している感じですね。ころにありますか?をつくれることが面白さだと思います。というのも、私たちは世間の常識や、当たり前の風潮に囲まれて生活していますが、流行するフィクションやコンテンツは、世間や社会に向けてさまざまな「問い」を投げかけているものが多いのです。文芸評論家は、その「問い」を取り出して提示する仕事で、当たり前とされる常識や既存の価値観へ疑問や気づきを与えることができるところが面白さだと思います。読んだ人には、今まで当たり前だと思っていた価値観やものの見方がガラッと変わる瞬間の三宅香帆さん(以下三宅) 本の魅力を発信す三宅 三宅 「みんな気になっているけど、まだ誰にも三宅 ——文芸評論家とは、どのような仕事なので——具体的には、どのようなことをされていま——仕事と読書をテーマにした本(『なぜ働——文芸評論を書く面白さは、どのようなと主な仕事は本を書くことで、評論や書くことに関しては、世の中への「問い」三宅 三宅 三宅 三宅 面白さを味わって欲しいですね。か?本の読み方や文章の書き方がテーマになることが多いですね。社会人向けには「どうしたら面白く本を読むことができるのか」や「どうしたら働きながら本が読めるか」といったお話をします。また、学校に読書感想文の書き方を教えにいくこともあります。すが、どんなふうに教えるのですか?読書感想文の書き方には型があるので、まずそれを教えます。それと、本全体に対する感想を書こうとすると難しくなるので、自分がいちばん印象的だった部分を抜き出して、それに関して、なぜ印象的だったのかを考えていきます。共感したからなのか、逆に自分の考えと全く違って驚いたからなのかを書いてみるようにと教えています。多くの人が「自分だけの言葉」を使えるようになるといいなと思っているんです。人と違うことを言うのは、すごく勇気が必要になります。皆と同じことを言ったり、皆と同じものを読んでいたほうが安心できるなかで、「こんなことを思ってるのは自分だけかな」と思ったことを言葉にすることで楽になれることがあると思います。言葉の使い方や文章の書き方を学ぶだけで、気持ちの整理がつく瞬間があるんじゃないかと思っています。かでも、SNSなどで自分だけの言葉を使う大切さを強調されています。SNSでは強い言葉が飛び交っていて、「こう言うべきだ」という空気が蔓延している気がします。そういった雰囲気にあまり支配されないようにするために必要なのが、「自分だけ——講演では、どのようなテーマで話すのです——読書感想文に苦労した人も多いと思いま——他に文章講座もされていますよね?——著書『「好き」を言語化する技術』のなの言葉」を使うことだと考えています。われています。どう思いますか?高校生は忙しいので、なかなか本を読む時間をとれないのだと思います。大人はそれ以上に読んでいないのですが、読めない原因は大人も一緒ですよね。そう思います。今インターネットの世界でも、てっとり早く情報を得られるものとして文章より動画が好まれていますから。どうしたらいいでしょう?まずは、大人が楽しそうに本を読むことから始めるのがいいと思います。読書に限らず大人が勧めたことって、子どもはなかなか素直に従いませんよね。自分が高校生の時もそうでしたから。それより、大人が楽しそうに本を読んでいれば、それがいつのまにか高校生にも自然に伝播していくだろうと思います。どデジタルメディアがより身近になったためという話も聞きます。三宅さんご自身はYouTubeやSNSでも発信をされていますので、そういうメディアに否定的ではありませんよね?私は小さい頃からインターネットに触れてきた世代でしたが、そのせいで本から離れることはなく、むしろネットで本の情報を得てきました。インターネットで読みたい本を探したり、好きな作家さんのSNSをフォローすることもあります。インターネットと本は別に対立するものではないので、うまく活用して本の良さも伝えられたらと考えています。そうですが、何かきっかけはあったのですか?特にきっかけなどはなくて、性格がイン三宅 三宅 三宅 三宅 三宅 ——最近の高校生は読書離れが進んでいるとい—— やっぱり忙しいことが原因?——では高校生に本を手に取ってもらうには、——高校生の本離れの原因として、SNSな——三宅さんは小さい頃から読書が好きだったドア派だったせいか、幼いころから本と漫画が好きでした。家に本がたくさんあったわけでもなく、図書館で借りたり、友だちと漫画の貸し借りをしていましたね。高校時代は合唱部の練習がすごく忙しかったので、部活と勉強で毎日のスケジュールが埋まっている状態でした。そんなハードな生活から逃避するように、合間を縫って本を読むこと三宅 ——どんな高校生だったのでしょうか?Kaho Miyake Selection文系学生向け『夜は短し歩けよ乙女』 (KADOKAWA/角川文庫) 森見登美彦理系学生向け勉強の息抜きに…大学生活がすごく楽しそうに描かれていて、こんな大学生活を送りたい!というモチべ―ションになります。主人公の大学生ふたりの恋愛や、少し不思議な出来事を通して、高校とは違う世界を伺い知ることができ、大学への夢が広がりますよ。『藍を継ぐ海』(新潮社)『宙わたる教室』(文藝春秋) 伊与原新『藍を継ぐ海』は日本のいろんな地方を舞台にした短編集で、『宙わたる教室』は定時制高校を舞台にした作品。作者の伊与原さんは地球惑星科学の研究者だった方で理系の小ネタも多いので、理系の人にもオススメです。受験生へオススメの本

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